ニセ科学の原典批判2つ
現在、2つのブログで興味深いエントリ・シリーズが展開されている。
TAKESANさんのブログ「Interdisciplinary」の「『ゲーム脳の恐怖』を読む」というシリーズ(⇒第1回URL)
と、
FSMさんのブログ「ほたるいかの書きつけ」の「「水からの伝言」はどうやって作られているのか」というシリーズ(⇒第1回URL)
だ。
TAKESANさんの「『ゲーム脳の恐怖』を読む」では、ブームにもなった「ゲーム脳」というニセ科学の聖典(^^;『ゲーム脳の恐怖』(森昭雄・著)のテキストに沿って丁寧に読み解いていく。当然、読み解いていくにつれて著者の論理の無茶苦茶さが浮き彫りになっていく仕掛けになっている。
FSMさんの「「水からの伝言」はどうやって作られているのか」では、『水からの伝言』『水からの伝言 vol.2』『水からの伝言 vol.3』(江本勝・著)の巻末に掲載されている「「実験」内容」について、これもテキストに即した形で丁寧に批判を加えている。
いずれのシリーズもそれぞれの「説」の根拠となっている文献を採り上げている点で非常に意義があることだと思う。
というのも、こういうものは世間に流布される過程で本来主張された内容が崩れ去り、信じたい側の信じたいように内容が改竄されて、残っているのは「言葉」だけ、ということにもなりかねないからだ。
例えばTAKESANさんのブログのコメント欄では、森昭雄氏が『ゲーム脳の恐怖』で書いたものとは全く違う自分独自の定義による「ゲーム脳」を主張して平気な人が出てきている。これは極端な例としても、伝言ゲームで伝わっていくことの多いニセ科学では多かれ少なかれ「誰が、どういう内容で言い出したか」が忘れられがちなので、原典についてちゃんと紹介(し批判)することは、もともと何の話をしていたかを忘れないために必要なことだと思う。
TAKESANさん、FSMさん。期待していますので、頑張ってください。
TAKESANさんのブログへのトラックバックから、後藤和智さんのブログ「後藤和智の雑記帳」内の「ニセ科学と俗流若者論の関連性」というエントリにたどり着いた。
ここで後藤和智さんは
ところでこれはあくまでも仮説なのだが、俗流若者論にはまる人って、ニセ科学に親和的なんじゃないだろうか。これはその逆よりもかなり関連性が強いのではないかと思う。要は通俗的な青少年に対する認識、要するに今の子供や若年層は根本的に異常である、ということを「納得」するため、あるいは「異常」な若年層を「矯正」する論理を構築するために(もちろん、両方である場合もある)、ニセ科学が使われる、ということだ。
と述べている。
これは恐らくその通りで、しかもこれはおそらく「俗流若者論にはまる人」だけではないのだと思う。
若者論に限らず、「信じたい」「こう思いたい」需要があるところに、ニセ科学は忍び込むんだろうな。ここでいえば「今の子供や若年層は根本的に異常である、ということを「納得」」したいという需要だし、他にも「大企業が儲けるためだけにやっている」だとか「ラクに環境問題を解決できる手段があるに違いない」だとか、「信じたい」需要はたくさんある。
いや、彼らにとってその需要に応えるものは必ずしも「ニセ科学」である必要はないのだけれど、「ニセ科学を受け入れることもやぶさかでなし」という点でフィルタが粗いわけだし、科学の方ははなかなか人に都合のいい結論を導いてくれないので採用しにくい......となればますます「ニセ科学」採用率は高くなってしまうのだと。
誰だって漠然と抱いている不安感なり焦燥感なり嫌悪感なりをパッと言葉にしてもらうと、とても気持ちがいいものだ。その気持ちよさに溺れず、その説をどれだけ批判的に検討できるか(というか、まずその気があるか)で、その人の行き先が決まるんだろうなあ。
ニセ科学は禅の魔境に似ているかもしれない。誰にでも訪れる気持ちのいい瞬間だけども、それにどう対処するかで結論が全然変わってしまう。
「マイナスイオン史」みたいなのをまとめておられる方はいないだろうか?
特にアメリカの「negative ion」との関係(私はないと思ってたんだけども)などまでわかるような小史をまとめてらっしゃるサイトがあれば勉強になるのになあと思う。
知ってる人、教えてください。m(_ _)m
突然食いたくなったものリスト:
- 鶏のさっぱり煮
本日のBGM:
I Shot The Sheriff /Eric Clapton
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すごい原典批判がはじまっている。ウチの記事はトラックバックするほどの内容ではないのだけど、祝砲とかお礼ってことで。 続きを読む



言及ありがとうございます。
たぶん、多くの人にとっては、原典に基づく批判は必要なくて、「(水伝とかゲーム脳って)要するになんなのよ」というのを示すほうがずっと重要なんだと思います。きくちさんや田崎さんや渋研Xさん(と略していいんでしょうか?)がまとめられている文書は、まさにそういう目的のためには適切なものだと思います。
ただ、そうは言っても、誰かが原典の文章に対して逐次的に批判する作業は必要だと思うし、きくちさんたちが早い段階できちんとそれをやっていることはkikulogを見てればわかるのですが、それが簡単に参照できるところ(ネット上)にあると、多くの人にとって、批判する際にもたぶん迫力を持って批判できると思うんですよね。
なので、ちょっとマニアックかもしれませんが、^^;;
やる意味はあるのかな、と思ってやってます。
今晩は。
ゲーム脳に関しては、実は以前、森氏の著書を全文転載(!)して検討した奇跡的なブログがあったのですよね。今は無くなっていますが…。
森氏の場合、とにかく、言っている事の矛盾とか飛躍のレベルが尋常ではありませんので、それを知らしめ、また、「好きなように」使われるゲーム脳という語を提唱した人が、どういう主張をしているか、というのを紹介するのは、そこそこ意義があるかと思い、始めました。
FSMさんと偶然時期が重なったのが、なかなか興味深いです(笑)
ゲーム脳のニセ科学性は知っているが森氏が具体的に何を言ったかはよく知らない、という方は、「これほどまでにひどいのか」、と感じられるかも知れませんね。
自分の所でも言ったのですが、最も説得したい層、に向けて書いたものでは無いのですよね。それはあまりにも難し過ぎるので。でも、原典のまとまった批判はあっても良いかと思って、やってみました。
>FSMさん
こんにちは。
確かにマニアックではありますが。(^^;
私自身、水伝の本質は「解釈編」の方にあると思います。そして多くの人も同じように考えるからこそ、ここまで丁寧に「実験方法」について紐解こうと思う人もいなかったように思います。
恐らく確実に、真面目に読んでるとバカバカしくなるでしょうから。(^^;
しかしやはりこれは非常にスタンダードな部分として必要なことだったと思っています。私が先のエントリで書かせていただいたとおり、「解釈編」は「現象編」がないと成り立ちませんし、水伝というくだらない呪術に「科学」ができることといえばやはり「解釈編」しかないと考えるからです。
>TAKESANさん
こんにちは。
凄いブロガーがいたんですね。(^^;;
なんというか、ゲーマーの怨念を感じます。(^O^)
「ゲーム脳」や、あるいは例えば「バカの壁」なんていうのは非常に秀逸なキーワードであって、その言葉単独で流通する要素を持ってるんですよね。
(新書のタイトルはむしろそれを意図してつけられるわけで、これからもっと増えていくんでしょう)
ですからその言葉の元々の意味を、ちゃんと押しピンでボードに固定しておかないと、いつの間にかお互いが何の話をしているのかわからなくなってしまい、批判も無力になってしまうと思います。
確かに仰るとおり「最も説得したい層、に向けて書いたものでは無い」というのはその通りだとは思います。現に例の方は「タネ明かしの後の典型的なダメ反応」を早速されていますね。(^^;;; まあもう「最も説得したい層」には入っていないとは思いますが。
しかしそれでもFSMさん、TAKESANさんのシリーズは意義深い。期待しております。